自己破産における同時廃止と破産管財の違いとは?

借金の額がいくらあれば自己破産が認めてもらえるのかと迷っている人がいますが、自己破産は借金の額が判断基準になるわけではありません。
自己破産の判断基準はただ一つ「返済不能」かどうかだけです。返済不能というのは「返済期限までに返済ができない状態にあり、返済できない状態が将来も継続する可能性が高い」ことです。
現在の借金が多くても、給与の高い人や、資格や技術によって将来的に支払う収入が見込まれる人などは返済不能とは言えません。
例えば、毎月の手取額が20万円、アパート住まいのサラリーマンが消費者金融などに500万円の借金があったとします。借金の金利が18%だとすると、利息だけで毎月7万4千円を支払わなければなりません。
元金の支払いや生活費のことも考慮すると、20万円の収入だけでは到底暮らしていけません。このような状態は返済不能と言えます。
ところで、自己破産には「同時廃止」と「破産管財」の2種類があり、申立者に換価できるだけの財産(通常、20万円以上)の無い場合は破産手続きの開始の決定と同時に手続きを終了させる同時廃止事件となります。
換価できるだけの財産がある場合は破産管財人が選任される破産管財事件として扱われます。
なお、破産管財人によって換価された代金は各債権者に対して債権額に応じた配当が行われます。
同時廃止と破産管財では手続きにも違いがあり、同時廃止の場合は裁判所への予納金が1~1.5万円と少額で済みますが、破産管財では最低でも50万円が必要です。
また、免責が確定するまでの期間も同時廃止は1~2ヶ月と短期間になっていますが、破産管財は半年以上、状況によっては1年以上かかることもあります。
ちなみに、破産管財は期間が長期化することや、予納金が高額であることから申立人に大きな負担となるため、東京地方裁判所などの一部の裁判所では手続きの迅速化と申立人の負担の軽減を目的として、平成11年から「少額破産管財」という制度を設けています。
なお、少額というのは債務額の少ない自己破産ということではなく、予納金が少ないという意味です。
実際に、予納金は20万円と通常破産管財より大幅に減額されています。また、少額破産管財になると、手続きが2~3ヶ月で終わるようになります。
ただし、条件があり、弁護士が代理人となって申し立てた場合に限定されます。本人が申し立てたり、司法書士が代理人になっていたりすると、通常の破産管財として扱われます。
つまり、弁護士が代理人になっているからこそ予納金が少なく、手続き期間も短くできるということです。
予納金が少ないということはすなわち、破産管財人の報酬が減額されるということです。そのためには、報酬を減額させ得るだけの手続きの容易さが必要になります。
だからこそ、弁護士が申立人の代理人となって破産申立前の事前の調査を十分に行い、必要書類は万全に用意し、手続開始後も破産管財人に協力して迅速な処理を図るようにしています。
自己破産をしてもチャラにならない!?免責されない債権 とは?
自己破産を裁判所に申し立てて免責が確定すると、原則としてすべての債権に対する返済の義務が免除されます。ただし、債権の中には「非免責債権」と言って免責のされない債権があります。
非免責債権の内、代表的なものが「租税等の請求権」です。租税等の請求権とは「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」のことを言います。
文字通り国税の債権であり、所得税や贈与税、相続税などがあります。これらの税金を滞納している場合は、自己破産をしても納付義務から逃れることはできません。
「国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」というのは、地方税法や国民年金法など、国税徴収法の例によって徴収することのできる請求権のことです。
地方税としては市町村民税や固定資産税、事業税、自動車税などがあります。また、国民健康保険料や国民年金保険料なども非免責債権に該当します。
なお、交通違反の罰金など、警察や自治体からの罰金に関しても税金同様、免責されることはありません。
ちなみに、下水道料金は下水道法という法律で徴収できることが定められているため非免責債権ですが、水道料金については法律の規定がないため、非免責債権にはなりません。
非免責債権として次に多いのが、「損害賠償請求権」です。
ただし、原則として損害賠償の支払債務は免責の対象であり、現実にほとんどの損害賠償は支払いが免除されています。
しかし、自己破産者の「悪意」による不法行為で与えた損害や、悪意がないにしても「重過失」による行為で与えた損害に対する損害賠償金は自己破産後も支払うことが義務付けられています。なお、悪意というのは積極的な加害行為を意味します。
例えば、暴行によって相手に損害を与えた場合は「悪意」があったため、被害者への損害賠償金は免責されません。
また、浮気の慰謝料は不法行為による精神的損害ではありますが、悪意で加えたとは認定されないため、免責になります。
交通事故で言うと、ひき逃げや酒酔い運転、信号無視など、危険運転致死傷罪となるような重過失事故は免責が認められませんが、わき見運転などの単なる過失事故であれば免責の認められる可能性が高くなっています。
そして、「養育費」も非免責債権です。自己破産をしたとしても親子の血のつながりがなくなるわけではありません。親が子を育てるのは義務であり、子供の養育費の支払いは当然免責の対象にはなりません。
最後に、「故意」に「債権者一覧表」から除外した債権者の債権は非免責債権になります。
自己破産の手続きには債権者の実態の把握が重要になります。債権者名簿に記載されている債権者には裁判所から通知が来るので債権者は手続に参加することができ、異議を提出したり意見を述べたりする機会が与えられます。
手続に参加する機会のことを「手続保障」と言います。当然、債権者名簿に記載されていない債権者にはこの手続保障が与えられません。
そこで、自己破産者が故意に債権者一覧表から外した場合は、当該債権者の債権は免責されなくなります。ただし、破産者自身が債務を負っていることを知らなかった債権に関しては免責の対象になります。
消費者金融などで借入をして、一部の業者だけ債権者一覧表に入れずに、破産事件中にも通常返済している人がたまにいますが、もしそれがバレたときは破産手続きが中止になる可能性が高いので、絶対やめておきましょう。
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